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食の歴史その27~アングロサクソン人がタコ、イカを食べない理由~

12 7月

おはようございます。今日も皆さんの暇つぶしになればと願ってコラムを書いてみました。

今回も地図で説明するために画像を一つ入れています。

人間は雑食動物の最たるものとされています。哺乳類全般は言うまでも無く、アリ、ゴキブリから、芋虫や蛆虫まで美味しく味わう人々が世界にはいます。

中には再三起こった飢饉からの経験なのか土を食べる例も報告されています。

中華料理で最高級の食材にツバメの巣、熊の手、猿の脳味噌などがありますし、日本人もウニ、ナマコ、ホヤなどといった食材に舌鼓をうちますので、特に欧米人からは不気味な人たちとうつるに違いありません。

これは物好きではなく、飢えないよう何でも食べて生き残る知恵なのですが、他の哺乳類には無い何でも食べる雑食性とその食欲には驚かされるばかりです。

例えば、20世紀の中国ですと、国民党との戦いから共産党が中国南部の拠点を捨てて北部の延安までの長い逃避行を行った長征がありますが、この逃避行でお偉方までもが餓死寸前となり、ベルトや靴も茹でて食べ、それでも足りず、家畜の糞から未消化の穀物を探して食べたりもしたと言われています。

逆に、殆どの人が日常的に食べているにもかかわらず、特定の食べ物をタブー視する習慣も世界中に見られます。

ヒンズー教の牛、ユダヤ教、イスラム教の豚などが有名ですが。中にはチベット、アメリカ先住民のように魚肉をいっさい口にしない民族も少なからずおります。

モンゴルでも魚はタブーだったようで、若き日のチンギス・ハーンは食うに困って魚や野鼠まで食べたという逸話が残っています。

そして本題ですが、ドイツ、イギリス、北欧などのゲルマン系はタコ、イカを食べる習慣が殆ど無いといいです。

なかでもオクトパスの名を与えられたタコは別名デビルフィッシュと呼ばれるほどの嫌われ者です。

ゲルマン系がタコを食べない理由の一つにキリスト教の原点でもあるユダヤ教の戒律があるとされています。

ユダヤ教では魚類はヒレとウロコが備わったものだけしか食べてはならないとされており。

具体的にはタコ、イカ、カニ、エビ、ウナギ、エイ、貝類、当時は魚に分類されたイルカや鯨などです。

捕鯨反対、イルカ漁反対を唱える欧米人の背景には聖書にある食の戒律が根底にあるのかも知れません。

それはさておき、キリスト教徒の間では『旧約聖書』にある食の戒律が予想以上に評判が悪く、中東と異なる風土や動植物が見られるヨーロッパでは、豊富な食材を禁じようにも説得力はなく、古代のキリスト教徒は何かと言い訳を見つけてはカニ、エビ、貝類を食べ、早々と『旧約聖書』のタブーは無視されました。

ただし、イカとタコについては、そのグロテスクな見かけからの連想もあって、誘惑者、裏切り者、噓吐きといった偏見の目で見られてきました。

特にドイツやイギリスなどでは好色的で執念深く、しかも凶暴な動物というイメージが張り付いていました。

大航海時代以後の1600年代になると、北欧ノルウェー沖合いの北極海周辺に出没する巨大なタコまたはイカの姿をしたクラーケンという化け物が伝説となっています。

クラーケンは天地創造から世界の終わりまで行き続け、全長2.5キロもあるきょだくぃな動物で。

その巨大な触手で船を襲い引きずり込むと言われ、命知らずの船乗りでさえ、その存在に怯えていました。

今では全長10メートルもあるダイオウイカがクラーケンの正体だったのだろうと推測されています。

このようにヨーロッパ北部の海域で実像がゆがめられたのは、タコが主に温帯から亜熱帯の暖かい海に生息するため、ゲルマン系の人たちに馴染みがなく、食べる機会が少なかったのも偏見を促す大きな原因になったのだと推測されています。

いっぽう、キリスト教が伝わる前からイカやタコを食べてきた地中海地方では古くから重要な海の幸でした。

現在でもスペインのパエリア、あとはイカをイカ墨で煮込んだ物になりますと、このスペイン製の缶詰をネット上から買う事も出来ます。

ポルトガルやギリシャなどではフライや炭火焼きにして食卓を彩り、観光客も舌鼓を打っています。

地中海地方の人々は外見より自らの舌を優先させ、カエル、カタツムリ、カキといった一見正体不明のゲテモノも平気で平らげきました。

中でも舌が肥えているので、手当たり次第口に入れるフランス人をイギリス人やドイツ人は徹底して軽蔑している歴史があります。

今でもフランス人の悪口の一つに「フロッギー(カエル野郎)」や「ジョニー・クラポー(ヒキガエルのジョニー)」があるのはこうした理由もあります。

日本ではタコやイカをひょうきんだが知恵があり、人間に対して好意的で縁起の良い動物として描かれ、京都をはじめ各地にある蛸薬師(たこやくし)は、薬師如来が海をタコに乗ってやってきたという伝説を生むほどです。

こうしたゲルマン系も材料を何も教えずにたこ焼きやイカ素麺を食べさせると歯ごたえを楽しんで舌鼓を打ちますので、人間は究極の雑種動物なのだなと再確認されます。

そんなイカやタコは北アフリカのモロッコなどで底引き網漁によって取れたものが日本に輸入されたりしていますが、最近は諸外国に買い負けて前ほど安く手に入らなくなってきたそうなので、これらの値段もいずれ上がるやも知れません。

その日が来るまでに今日はタコの酢味噌和えを頂こうと思います。

コラムは以上で終わりですが、皆さんいい暇つぶしになったでしょうか?

食の歴史その26~ユダヤ教と食のタブー~

8 7月

おはようございます。今日も皆さんの暇つぶしになればと願ってコラムを書いてみました。

図表で説明もするため、今回も画像を載せます。

 

世界には様々な宗教と食のタブーがあります。

世界三大宗教と言われるユダヤ教も例外ではなく、興味深い食のタブーもあったりします。

ユダヤ教で食に関する戒律を「適正な」を意味するカシェールを語源とするコシェルと呼びまして、神によって定められた約束事とされており、『旧約聖書』の「レビ記」第11章の中で次のように述べられています。

「……獣のうち、全てひづめの分かれたもの、すなわち、ひづめの全く切れたもの、反芻するものは、これを食べる事が出来る。ただし、反芻するもの、またはひづめの分かれたもののうち、次のものは食べてはならない。すなわち、ラクダ…岩タヌキ…野ウサギ…これらは反芻するけど、ひづめが分かれていないから、汚れたものである。豚、これはひづめが分かれており、ひづめが全く切れているけれども、反芻することをしないから、汚れたものである」

このあと魚、虫、と各カテゴリーごとに目録が続きますが長いので割愛して下に食べてもいいもの、いけないもののリストを出しておきます。

獣についてもう少し述べますと、ひづめがわかれていない馬、肉球とも言う、足の裏のふくらみで歩く猫や狐なども食べてはいけないものとされています。

なぜ神は食肉には食べてよいものといけないものと細かく分類し、どんな基準によって分けたのかをい文化人類学者のマービン・ハリスは次のように説明しています。

食べてよいとされた獣を整理すると、ひづめが分かれていて反芻する哺乳類であり、さらに付け加えれば、乳が搾り取れ、食料が人間と競合しないうえに、おおむね群れをなしているので、家畜にしやすいなどの合理的な理由もあると説明しています。

反芻する哺乳類はすべて草食動物ですが、これらは人間の食用に適さない固い繊維質の植物、たとえば草やワラ、切り株、木の葉などを食べて大きくなります。

飼育のために人間にとって大切な穀物を与える必要がないばかりか、肉やミルク、皮を提供してくれる上に移動や農作業などの労働力としても十分に使えます。

このような特性は食べてよいとされる動物とされるにあたって極めて重要で、肉を得るための家畜化が簡単で、雑食や肉食獣の動物に比べたら元手がほとんど掛からないなどがあって、ひづめが分かれて反芻する動物は食べても良いとされた最大の理由と考えられています。

最初は反芻するかしないかが条件でしたが、ひづめ云々は後付けで加わったとされてあり、その理由としてはラクダを食べてはいけないほうに分類するためだったと考えられています。

定住した農耕民であるユダヤ人は、ラクダをほとんど使わず、その代用として牛や羊を利用してきました。

ラクダはきわめて繁殖が遅く、しかも産むのは一頭で離乳期間も1年近くに及ぶなど、食肉にするには効率が悪いので、反芻以外にも複雑な条件を持ち込んでタブーとしたのは古代ユダヤ人の経験から基づく比較的合理的な理由を神の言葉として『旧約聖書』に書いたのだろうと推測されています。

コシェルは上に出した図表に示したように、哺乳類以外にもおよんでいます。

魚では、ヒレとウロコがあるものと限定され、これによってイカやタコ、カキ、ハマグリなどが禁止されています。この点からボンゴレやグラムチャウダーが好きな自分としては絶対にユダヤ教には改宗できないと思っています。

鳥は羽毛があって空を飛び、かぎ爪がないものが食べても良いとされ、逆にワシ、ハヤブサ、カラスなど20種類が食べるのを禁じられていますが、それらの大半は肉食の猛禽類(もうきんるい)や雑食性であります。

虫の中でイナゴが食べてよいとされたのは、比較的体が大きく、1度に大量に捕まえる事ができるため、効率が極めて良い点を評価されたのでしょう。

しかも、穀物を食い荒らす虫なので、害虫駆除となって一石二鳥でもあります。

また、食材ばかりでなく、調理法殺し方にもややこしい規定があります。

調理法では、魚をのぞく肉類と乳製品を同じ道具で煮炊きしてはならないとされています。

獣とそれが生み出したミルクは親子関係にあると規定され、「子ヤギをその母ヤギの乳で煮てはならない」が拡大解釈されて肉料理にバターを使ったり、クリームソース入りのソースを添えたりも出来ません。

日本の親子丼も拡大解釈されたらご法度になるかも知れません。

そんな戒律のため、イスラエルのマクドナルドでユダヤ教の戒律を守っている店は青い看板で、チーズバーガーを注文しますと、ご丁寧に「チーズをつけますか?」と言われるとの事です。

どうしても肉を食べた後に牛乳が飲みたかったら、牛肉を食べてから6時間待てばよしとされ。

反対に乳製品を食べたら30分間は牛肉を食べてはいけない。

しかも、調理は別々に行うのが原則ですから、チーズ用のまな板と牛肉用のまな板と別々に用意しなければならず、日本人にとってややこしいことこの上ありません。

より熱心なユダヤ教徒になりますと、牛乳と牛肉を同じ冷蔵庫に入れず、食材ごとに使用する調理器具も使い分けています。人によってはミルク入りコーヒーさえ遠ざけているそうです。

他にも観光者の話として、土曜日に煙草を吸ったら何故か怒られまして、それはユダヤ教の休日が土曜日で日曜日は普通に働きに行く日なので、その休日である土曜日は喫煙さえ戒律で禁じられているようです。

以上でコラムは終わりですが、いい暇つぶしになったでしょうか?

食の歴史その14~神々とワイン~

21 6月

こんばんは。今日も皆さんの暇つぶしになればと思ってコラムを書いてみました。
携帯やスマホで見ている方もいるだろうと考え、あえて画像は入れていません。

聖書では人類が初めて口にした酒はワインとされています。
「旧約聖書」にはワインの記述が500箇所ほどあり。
その中でノアの大洪水の話では洪水が終わって箱舟から出てくると。
「ここにノア、農夫となりて、ブドウ畑をつくることはじめしが、ワインを飲みて酔い、天幕のうちにありて裸になれり」
と「旧約聖書」ではノアが初めてブドウを栽培し、ワインを作った事になっています。

「新約聖書」では、最後の晩餐にてキリストが、
「お前達のために流す私の血」
と言って弟子達に分け与えて以来、教会のミサに欠かせないものとなりました。

また、ギリシャ神話では酒の神ディオニソスの血とされ、古代ローマでは酒の神バッカスへのささげ物でした。

古代ギリシャではディオニューシア祭という。酒の神ディオニソスにちなんだ祭りがありましたが。
この日に限っては酒の席だからなのだろうか、階級や男女問わず、からかったり冷やかしても許され。

ディオニューシア祭のメインイベントである演劇の上演も普段は言えない反戦のメッセージや体制批判などを表立って行える貴重な場でもありました。

ワインがいつから飲まれたのかについては諸説ありますが。6000年前のメソポタミア文明があった所の遺跡からワインを醸造していた痕跡がありますし。このメソポタミアは「ギルガメシュ叙事詩」にて「旧約聖書」よりもはるか昔に洪水伝説が発祥した所でもあります。

ちなみに、ワインという言葉はラテン語の「ウィヌム」、古代ギリシャ語の「オイノス」に由来しています。
このラテン人や古代ギリシャ人が参考にしたもっとも古いワインを指す言葉「ウィヤナス」はトルコのアナトリア半島に勢力を持った世界最古の製鉄民、ヒッタイト帝国の言葉であるとの説があります。

こうして古代からヒッタイト人、ラテン人、古代ギリシャ人がそれぞれ命名したワインは3700年ほど前にエジプトや中東からギリシャに伝わり、さらにギリシャが植民地を拡大していきますと。イタリアにも広まり、そこから南フランス、スペインへと広まっていきました。

この当事はワインをまず宴会を行う家の主人が最初に飲み、これを時計周りと逆の順番で回し飲みするマナーなどもありました。

他にも古代ギリシャ、古代ローマではワインを水で割って飲むのが常識でした。

割る割合もワイン1に対して水が3で割ると決まっておりました。

割らずに飲むと野蛮人の飲み方とされました。

こうした水で割って飲む習慣はワインがまだ大量生産されず貴重品だったので、生のまま浴びるほど飲む余裕が無かったのと。アンフォラという素焼きのかめの中に保存していると水分が蒸発して濃縮され甘みも酸味も強くなってしまう事が多々ありました。

そこで、濃縮されたワインが発酵しないよう松ヤニや塩水を加えましたが。それでも味が濃縮されているので、水で割って飲みやすいよう工夫したとも言われています。

その後、ローマ帝国の時代である西暦300年代にはフランスのボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュ、そしてドイツのライン川沿いなど、現在でもワインの名産地とされている場所でブドウの栽培と同時にワインの製造も行われていたようでした。

それからも少し時代を経て、ローマ皇帝がキリスト教を帝国の宗教とし、布教が広まると。教会では僧侶がワイン作りを熱心に取り組み技術も向上させ、「聖なるキリストの血」の研究に没頭していきました。

こうして教会の僧侶が努力して醸造していったワインは上質なものを醸造するためには品質、気象、土壌、地形などに左右され。あらゆる面で繊細さを求められるので、ワインが文化と呼ばれてきたゆえんでもあります。

欧米のアルコール文化は、
フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなどの南ヨーロッパを中心とした「ワイン文化圏」

イギリス、オランダ、北欧を中心とした「ウイスキー文化圏」

ドイツ、オーストリア、チェコとアメリカを加えた「ビール文化圏」
に大きく区別されます。

ワイン文化圏では、基本的にワインを飲みながら食事をします。

なかでもフランス人はワインと食事の調和になみなみならぬ情熱を注ぎ、料理の味を引き出すために、ワインの銘柄や種類にこだわります。

これは和食と日本酒との関係にも共通するところがあり。

例えば本膳料理や会席料理などの和食の多くは酒のためのおかずという意味合いが強く、肴(さかな)と言う字も、元々は「酒菜」、つまり酒を飲みながら食べるおかずという意味合いから生まれた言葉なのだと言われています。

晩酌という言葉がありますが、これは厳密には食事の前にお酒を軽く楽しむもので。以外に新しい習慣で。平安時代から食事と酒を一緒に味わうものでした。

ワインの話に戻しますと。ワインは食事中の酒ですが。ウイスキーやビールは食前の酒とされてきました。

ウイスキー文化圏ではカクテルも含めて酒を楽しんでからメインディッシュにかかるのが伝統とされているようです。

おもしろいことに、ワイン文化圏は食生活が豊かで農耕もいち早く発展し。産業革命後もそれほど工業が発展せず。宗教はカトリック文化圏と重なります。

逆に食生活が貧弱で産業革命が急速に進んだイギリスやドイツなどのプロテスタント文化圏ではウイスキーやビールを好む傾向があります。

これには、ブドウが暖かい所でしか栽培できないのに対し、ウイスキーの原料の大麦などが寒いところでも育つ事。

さらに気候的に寒い条件では度数の強いアルコールが好まれる事。

儀礼を重視してワイン作りに情熱を傾けるカトリックと、儀礼を軽視するプロテスタントの宗旨の違いなども深く関係していると思われます。

ここでコラムは終わりですが。皆さんいい暇つぶしになったでしょうか?

それではよい週末を。