Archive | 食い合わせ RSS feed for this section

食の歴史その33~食と健康をめぐる迷信を科学する~

22 7月

おはようございます。今日も皆さんの暇つぶしになればと願って、コラムを書いて見ました。

今日も図で解説しますので、画像を一つ入れようと思います。

 

戦前、戦中生まれの老人ですと、ウナ丼を食べた後に梅干を口に入れるとハッと気がつき、慌てて正露丸を取り出す人が近所にいましたが。

このように、異なる食品を同時に食べると有害と考える事を、古くから「食い合わせ」と呼んできました。

ウナギと梅干をはじめ、天ぷらとスイカ、カニとカキ氷、うどんとスイカ、ドジョウとトロロなどが代表的な食い合わせですが、実際には数え切れないほどあります。

こうした言い伝えは、古くは平安時代にまで遡ると言われ、江戸時代の儒学者である貝原益軒(かいばらえきけん)の健康教訓書『養生訓』の中にも、食い合わせ食品のリストが挙げられています。

これらの食い合わせを検討しますと、熱いものと冷たいもの、消化の良くない食べ物などがある事に気づきます。

しかし、科学的にはほとんど根拠がなく、現在では迷信とされ、ゆとり世代などの層になると食い合わせという言葉自体を知らない人も多い事でしょう。

食い合わせは日本的な食のタブー一種ですが、もともとは古代中国の陰陽思想を端に発しています。

陰陽は宇宙の万物の相反するものを陰と陽に二分、その組み合わせによって吉凶を占う易学の思想で、後にこれが日本に導入されると食生活の面に「食合禁(しょくごうきん)」つまり食い合わせを生んだと見られます。一部では早くから迷信と指摘されていましたが、民間では戦前まで大真面目に信じられていました。

食い合わせと似たような迷信に、中南米や東南アジアなどでみられる「温冷説」があります。

これは、すべての食べ物を温と冷に二分した分類法で、温、冷の基準は体温となります。

つまり、人間の体は非常に繊細に出来ており、熱くなりすぎたり逆に冷たくなりすぎると、ときには死に至る事があるから、食べ物の選択にあたってバランス良く取らなければならないという思想です。

<図表>にも見られるように、肉類などの動物性食品や脂肪の多いものは温に、野菜類や乳製品は冷に分類される事が多いです。

しかし、これは固定化された概念ではなく、地域や民族によって代わる場合も少なくありません。

例えば、卵はタイでは冷のほうに分類されますが、バングラデシュでは温のほうに分類されます。

東南アジアにおける温冷食の習慣は中南米ほど厳格なものではなく、最近では若年層はこだわらない傾向にあります。

もともと血液は温、母乳は冷の性質を持つと考えられていますが、一般に温冷説の背景には、女性の生理サイクルと結びつける事が多いです。

例えば、出産は母体の体温を大きく奪うために、それを補う意味でも出産・授乳期間は積極的に温の食事を取るようにすすめられ、これによって全身の血行をよくして貧血を防ぐ事ができると信じられています。

このような方法は栄養学的に理にかなっている点が多く、一概に迷信だからと言って軽んじるべき物ではありません。

食品を二つに分類する方法論は、ユダヤ教の戒律や中国の陰陽思想とも通じるものがありますが、この思想は古代ギリシャ、古代ローマに発生しアラブ世界に伝えられたと言われています。

のちにイスラム勢力のスペイン侵攻にともない再びヨーロッパ南部に逆輸入され、コロンブスなどが活躍した大航海時代の波に乗る植民地政策で中南米や東南アジアに持ち込まれたと見るのが、現在の定説となっています。

話を日本の食い合わせなどに戻しますと、「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざがありますが。文字通りに読めば、秋口のナスは味が良いので憎い嫁に食べさせる道理はない、と世に言う「姑(しゅうとめ)の嫁いびり」となっているが、それだけではない様々な解釈がみられます。

秋茄子はあくが強く体にさわるものなので、かわいい嫁の身を案じて食べさせるなという、まったく逆の例えをする説も根強いです。

ナスはヒスタミンという物質を多く含み、人によってはアレルギー症状を引き起こすとも言われ、味が良いからといって食べすぎると夏の暑さで弱った胃腸をこわしかねない。

こうした点を戒めたことわざと、一般には解釈される事が多いです。

中には、秋茄子は種が少ないので、子種がなくなることを案じた縁起かつぎだとする説もあります。

いずれの説にせよ、ことわざながら迷信のようなものだから本音部分はわからない。

しかし、故事とことわざに引き寄せた食のタブーは世界各地に無数にあります。

なかでも出産や授乳に関する食のタブーが特に多く、殆ど世界中でみられます。

生まれてくる子供にイボがつきやすいから「妊婦はタコを食べてはならない」、双子が生まれやすくなるため「二股ダイコンは食べない方が良い」といった根も葉もない迷信がまかり通っています。

また、スリランカでは「妊婦はネズミなどのげっ歯類やウミガメを食べるな」との迷信がみられます。

食べた動物に外見のよく似た子供が生まれるからというのが禁止の理由ですが、このような肉を本格的に食べる習慣が明治までなかった日本では首をひねる話です。

セックスと結婚にまつわる食のタブーの迷信も少なくありません。

インドで言う「女性は卵を食べない方がいい」は、多産なニワトリの習性から淫乱な女性になりかねないという戒めだとか。

しかし、インドネシアの「未婚の男はニワトリの手羽先を食べると結婚ができない」は現地語の「手羽先」と「拒否」の発音が似てることによる語呂合わせだったりします。

以上でコラムは終わりですが、皆さんいい暇つぶしになったでしょうか?

自分は食い合わせを気にしないので、もらったスイカを食べた後、夕食に天ぷら蕎麦でも頂こうと考えています。

食の歴史その28~江戸時代のおかず番付その1~

14 7月

おはようございます。今日も皆さんの暇つぶしになればと願って、コラムを書いて見ました。

今回もはめこんだ画像をもとにコラムを書いていきます。

まずは幕末に書かれたおかず番付の画像を一つ。

ざっと見て何が何だか分からないでしょうが、参考文献「江戸のまかない」にて現代語に訳した上に補足説明がついたものがありますので、そこから抜粋しますと。

sannentakuan3sisosarabu19

まず、中央の行司の下に沢庵、梅干を中心にぬかづけ、なすび漬け、茎菜漬けと並び。

112daikokuhisior0b01333d5ac0f55b8a411b08c21f2dd5

その下の世話役にでんぶ、ひしお、ざぜん豆、味噌漬け、唐辛子。

zyunbokuhpph01main2

一番下の段には味噌、塩、醤油の三大調味料となっています。

katsuobushiikasiokara-big2 hawa3

その右には年寄の欄があり、かつおぶし、塩辛、佃煮、ごま塩となっています。

これらは現在でも日本料理の基本となる調味料や食材なので、幕末も今も大して変わらないものとなっています。

そして右側が野菜や大豆を使ったメニューの番付で、左側が魚など肉をつかったメニューの番付となります。

この番付は大関までしかありませんが、江戸時代は大関が一番位が高く、横綱は名誉職で番付外でした。

では、右の野菜メニューの番付から解説を。

ただし、全部は列挙しきれないので、それぞれ一部からの抜粋になります。

八杯豆腐

大関に「八はいどうふ」とありますが、これは水6杯と酒1杯を入れて、煮立ったら醤油1杯を入れて煮立てる、そこに絹ごし豆腐を入れて、豆腐がグラグラ動き出したところを、おたまですくいだし、これに大根おろしをかけて食べるというメニューです。

自分もこのメニューを作りますが、感想としては安くて簡単であっさりしていて美味しいメニューです。

大根おろしがなくても、この一品で酒のつまみにもなるだろうと思っています。

昆布と油揚げの煮物

昆布と油揚げの煮物

関脇は「昆布油揚げ」昆布と油揚げの煮物です。小結はきんぴらごぼう、これはコンビニにもありますので、説明する必要もないでしょう。

前頭筆頭は煮豆で、食物繊維の王様なのだそうです。

前頭二枚目は焼き豆腐を具にしたおすまし。

008760_2

前頭三枚目はひじきの白和え、ひじきの煮物に砕いた豆腐を和えたもので、海草と豆腐の取り合わせという長寿食のイメージがあります。

四枚目は切り干し大根を薄味で煮た素朴なおかず。

五枚目はサトイモの仲間、「唐の芋」の茎を使った芋がらと油揚げの煮物。

j3SLZfQY

六枚目は油揚げに醤油をつけてあぶるだけ、刻みネギをつけると酒の肴にもうってつけだったりします。

七枚目は小松菜のおひたし。

ここまでが四季を問わずに食べられるおかずで、次は四季折々のおかずの番付を。

春の部も一部抜粋しますと、油で炒めた豆腐、笹がきゴボウ、麻の実を入れた「けんちん」というすまし汁。

わかめに酢味噌をかけた「わかめのぬた」「ニンジンの白和え」

油揚げ、大根、シイタケを葛(くず)でとろみをつけた「のっぺい(能平汁)」

レンコンを酢味噌とサンショウの若芽で和えた「蓮の木の芽和え」。

「ほうれんそうのおひたし」「海苔とウドの吸い物」。

わらびとがんもどきを煮付けた「わらびがんもどき」。

「たんぽぽの味噌和え」たんぽぽはサラダにしても美味しかったりします。

夏の部の抜粋は「地元ナスうま煮」「ささげごぼうの和え物」「いんげんごまひたし」「そら豆煮付」。

他にも「茄子の刺身」ゴマ油で軽く揚げた「茄子の揚げだし」。「かぼちゃゴマ汁」「フキの煮付」。

花が落ちて10日ほどの若いへちまの実を食べる「へちま煮浸し」。

白瓜(しろうり)をらせん状に細長く切って塩につけて干した「かみなり漬け」

最後にとりあげるのは茄子をマツタケの形に切って炒め煮にした「まつもどき」などのように多少凝った料理もあります。

秋の部の抜粋は「若菜汁」「サトイモころがし」「ふろふき大根」「とろろ汁」。

豆腐にとろろをかけた「山かけ豆腐」。「焼きしょうが」。

水気を切ってくずした豆腐に味をつけて炒る「炒り(いり)豆腐」。「あんかけ豆腐」。

「長いもおでん」「山芋のぐつぐつ煮」。

冬の部の抜粋は「湯豆腐」「こんにゃくおでん」「納豆汁」「かぶ菜汁」「輪切りゴボウ」「こんにゃく白和え」「ねぎ南蛮」「こんにゃく刺身」「ごま味噌」。

0902n_03

大根、こんにゃく、コボウ、人参、豆腐などを入れた味噌汁で、旧暦の12月8日に、その年の農作業の終わりである「お事終い(おことじまい)」を祝って食べた「お事汁」。

他にも「うど白和え」。鍋に材料を入れて焦げ付かないように水分を飛ばす「こんにゃく炒りつけ」。

「切干し大根白和え」。

などなど、今でも通用しそうなメニューが沢山あります。

明日は江戸時代の魚を使ったメニューの番付を書いて見ます。

皆さんいい暇つぶしになったでしょうか?暇つぶしだけでなく、簡単なメニューもありますので、今日の献立の参考にもなれば幸いです。