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食の歴史その48~古代ローマ庶民の接待ディナー

1 12月

こんばんは。今日も皆さんの暇つぶしになればと願ってコラムを書いて見ました。

今回は古代ローマのディナーには金持ちのディナーについての文献は美食を極めたものなど、沢山ありますが。庶民のディナーを書き記したものは珍しいので、庶民のディナーを優先的に取り上げてみようと思います。

童話作家グリム兄弟

グリム兄弟

後にグリム童話を編集するグリム兄弟やシェイクスピアにも影響を与えた古代ローマの詩人オウィディウスが書いた作品に、ロウで作った羽で空を飛び最後は墜落してしまうイカロスの話などの有名なエピソードを複数収めた『変身物語』があります。

フィロモンとバウキスの家の、ジュピターとマーキュリー

バウキスとピレーモーンの家の、ジュピターとマーキュリー

この中に神々が旅人に変身して村人の家でディナーをご馳走になる「バウキスとピレーモーン」という話がありまして。庶民のディナーが描かれていますので、これを中心に取り上げていきます。

天空の神ジュピター

天空の神ジュピター

天空の神ジュピターと、父ジュピターのお供するために翼の着いた靴を脱いだマーキュリーの親子が旅人に化けて。バウキスとピレーモーン老夫婦の家にお邪魔しますと、老夫婦は荒い布をかけた椅子を出し。二人はそこに体を休めます。

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それから囲炉裏の灰を掻き分けて昨晩の火種を見つけ、木の葉や乾いた樹皮に火を移して息を吹きかけ燃え立てたら、その炎で細かく割った薪を燃やし、水を張った銅鍋を暖めていきます。

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鍋の水が温かくなると、菜園で取れたキャベツを取り出して刻んでから煮込むのですが。今も昔もキャベツの芯は捨てています。

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刻んだキャベツと同時に二又のフォークで取ったベーコン細かく刻み、キャベツと一緒に煮込んで柔らかくなるまで待ちます。

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こうしてベーコンとキャベツのシチューが出来るまでの間、客と談笑しつつ桶にお湯を入れて客の手足を温めたりもします。

ついでに、古代ローマ時代はシチューの事を「オフエラ」と呼んでいました。

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シチューが出来るまでの前菜のことを指す「プロムルシス」が用意され。この前菜はゆで卵から始まり、オリーブの実、サクランボみたいに実った山グミ、酒かすに漬け込まれた大根、ヤギのチーズなどが皿に盛られて出てきます。

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古代ローマのゆで卵の特徴は貴族も金持ちも庶民も何故かお湯で茹でず、囲炉裏の熱した灰の中で卵を加熱し、ゆで卵を作る事でした。

ワインを水と混ぜる時に使うクラテル

クラテル

前菜が終わるとワインと水をクラテルという器で混ぜて出し。それからシチューが運ばれてメインディッシュを意味する「ケーナ・プリマ」が始まります。

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メインディッシュのシチューが片付けられると。蜂蜜とともにデザートにクルミ、イチジク、ナツメヤシ、スモモ、ブドウが運ばれ、最後のしめにリンゴが出ます。

古代ローマでは前菜の卵から始まって、しめにリンゴを出して終える事から、「初めから終わりまで」という意味で「卵からリンゴまで」という言い方が生まれました。

古代ローマのベッド

古代ローマのベッド

こうしてワインを飲みながらのデザートがなくなるとディナーは終わり。夜明けとともに起きて日没とともに寝るのが普通だった庶民はベッドを用意し、囲炉裏の火で部屋が暖かいうちに客を眠らせます。

古代ローマ庶民のベッドは柳で出来たベッドに綿が詰まって温かい布団をのせ、その上にシーツをかけていました。

古代ローマの詩人オウィディウス

古代ローマの詩人オウィディウス

以上が古代ローマの詩人オウィディウスの描いた庶民のディナーでしたが。彼は同じ時代を生きた他の詩人と違い、パトロンやタニマチを持たず。ギリシャ神話を参考に書いた『恋の歌』があまりにもエロチックだったために実際に読んだ皇帝が激怒し、罰としてローマから地方の田舎へと飛ばされた人なので、そういった立場から田舎の庶民の生活を見て書き残したのでしょう。

以上でコラムは終わりですが。皆さん、いい暇つぶしになったでしょうか?

今夜は冷えますので、自分もキャベツとベーコンでシチューを作って体を暖めるとします。

食の歴史その14~神々とワイン~

21 6月

こんばんは。今日も皆さんの暇つぶしになればと思ってコラムを書いてみました。
携帯やスマホで見ている方もいるだろうと考え、あえて画像は入れていません。

聖書では人類が初めて口にした酒はワインとされています。
「旧約聖書」にはワインの記述が500箇所ほどあり。
その中でノアの大洪水の話では洪水が終わって箱舟から出てくると。
「ここにノア、農夫となりて、ブドウ畑をつくることはじめしが、ワインを飲みて酔い、天幕のうちにありて裸になれり」
と「旧約聖書」ではノアが初めてブドウを栽培し、ワインを作った事になっています。

「新約聖書」では、最後の晩餐にてキリストが、
「お前達のために流す私の血」
と言って弟子達に分け与えて以来、教会のミサに欠かせないものとなりました。

また、ギリシャ神話では酒の神ディオニソスの血とされ、古代ローマでは酒の神バッカスへのささげ物でした。

古代ギリシャではディオニューシア祭という。酒の神ディオニソスにちなんだ祭りがありましたが。
この日に限っては酒の席だからなのだろうか、階級や男女問わず、からかったり冷やかしても許され。

ディオニューシア祭のメインイベントである演劇の上演も普段は言えない反戦のメッセージや体制批判などを表立って行える貴重な場でもありました。

ワインがいつから飲まれたのかについては諸説ありますが。6000年前のメソポタミア文明があった所の遺跡からワインを醸造していた痕跡がありますし。このメソポタミアは「ギルガメシュ叙事詩」にて「旧約聖書」よりもはるか昔に洪水伝説が発祥した所でもあります。

ちなみに、ワインという言葉はラテン語の「ウィヌム」、古代ギリシャ語の「オイノス」に由来しています。
このラテン人や古代ギリシャ人が参考にしたもっとも古いワインを指す言葉「ウィヤナス」はトルコのアナトリア半島に勢力を持った世界最古の製鉄民、ヒッタイト帝国の言葉であるとの説があります。

こうして古代からヒッタイト人、ラテン人、古代ギリシャ人がそれぞれ命名したワインは3700年ほど前にエジプトや中東からギリシャに伝わり、さらにギリシャが植民地を拡大していきますと。イタリアにも広まり、そこから南フランス、スペインへと広まっていきました。

この当事はワインをまず宴会を行う家の主人が最初に飲み、これを時計周りと逆の順番で回し飲みするマナーなどもありました。

他にも古代ギリシャ、古代ローマではワインを水で割って飲むのが常識でした。

割る割合もワイン1に対して水が3で割ると決まっておりました。

割らずに飲むと野蛮人の飲み方とされました。

こうした水で割って飲む習慣はワインがまだ大量生産されず貴重品だったので、生のまま浴びるほど飲む余裕が無かったのと。アンフォラという素焼きのかめの中に保存していると水分が蒸発して濃縮され甘みも酸味も強くなってしまう事が多々ありました。

そこで、濃縮されたワインが発酵しないよう松ヤニや塩水を加えましたが。それでも味が濃縮されているので、水で割って飲みやすいよう工夫したとも言われています。

その後、ローマ帝国の時代である西暦300年代にはフランスのボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュ、そしてドイツのライン川沿いなど、現在でもワインの名産地とされている場所でブドウの栽培と同時にワインの製造も行われていたようでした。

それからも少し時代を経て、ローマ皇帝がキリスト教を帝国の宗教とし、布教が広まると。教会では僧侶がワイン作りを熱心に取り組み技術も向上させ、「聖なるキリストの血」の研究に没頭していきました。

こうして教会の僧侶が努力して醸造していったワインは上質なものを醸造するためには品質、気象、土壌、地形などに左右され。あらゆる面で繊細さを求められるので、ワインが文化と呼ばれてきたゆえんでもあります。

欧米のアルコール文化は、
フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなどの南ヨーロッパを中心とした「ワイン文化圏」

イギリス、オランダ、北欧を中心とした「ウイスキー文化圏」

ドイツ、オーストリア、チェコとアメリカを加えた「ビール文化圏」
に大きく区別されます。

ワイン文化圏では、基本的にワインを飲みながら食事をします。

なかでもフランス人はワインと食事の調和になみなみならぬ情熱を注ぎ、料理の味を引き出すために、ワインの銘柄や種類にこだわります。

これは和食と日本酒との関係にも共通するところがあり。

例えば本膳料理や会席料理などの和食の多くは酒のためのおかずという意味合いが強く、肴(さかな)と言う字も、元々は「酒菜」、つまり酒を飲みながら食べるおかずという意味合いから生まれた言葉なのだと言われています。

晩酌という言葉がありますが、これは厳密には食事の前にお酒を軽く楽しむもので。以外に新しい習慣で。平安時代から食事と酒を一緒に味わうものでした。

ワインの話に戻しますと。ワインは食事中の酒ですが。ウイスキーやビールは食前の酒とされてきました。

ウイスキー文化圏ではカクテルも含めて酒を楽しんでからメインディッシュにかかるのが伝統とされているようです。

おもしろいことに、ワイン文化圏は食生活が豊かで農耕もいち早く発展し。産業革命後もそれほど工業が発展せず。宗教はカトリック文化圏と重なります。

逆に食生活が貧弱で産業革命が急速に進んだイギリスやドイツなどのプロテスタント文化圏ではウイスキーやビールを好む傾向があります。

これには、ブドウが暖かい所でしか栽培できないのに対し、ウイスキーの原料の大麦などが寒いところでも育つ事。

さらに気候的に寒い条件では度数の強いアルコールが好まれる事。

儀礼を重視してワイン作りに情熱を傾けるカトリックと、儀礼を軽視するプロテスタントの宗旨の違いなども深く関係していると思われます。

ここでコラムは終わりですが。皆さんいい暇つぶしになったでしょうか?

それではよい週末を。